<前提>
2005年12月20日に初版発行された、
『JAXA長期ビジョン -JAXA2025- 20年後の日本の宇宙と航空』
(宇宙航空研究開発機構 編、丸善プラネット株式会社 発行、2025)
(ISB4-901689-42-8)
というブックレットがあります。
2005年3月31日付けで宇宙開発委員会に報告された「JAXA長期ビジョン」を
書籍化したもので、書籍と同じ内容のものが、
いまもJAXAのWebサイトからダウンロードできます。
JAXA長期ビジョン - JAXA
https://www.jaxa.jp/press/2005/04/20050406_sac_vision_j.html
このWebサイトに貼られているPDF「JAXA長期ビジョン概要」の
Page.1にこの長期ビジョンの位置付けが書かれており、
・我が国全体を俯瞰して、我が国の宇宙・航空の中核的研究開発機関の
JAXAが、明確な将来像を提示し、それらを社会に問う責務がある
との認識のもと、独自に検討したものである。
・我が国と世界の将来を見通しつつ、
今後20年後までの宇宙航空分野の望ましい姿及び
その実現に向けた方向性について、提案したものである。
とのことです。
つまり、
・JAXAは航空宇宙研究の中核だから明確な将来像を示す責務があると思ってるよ
・今後20年後の宇宙航空分野の望ましい姿と実現方向性の提案だよ
ってことですね。
で、このビジョンの設定された時期を考えると、2003年10月1日に実施された、
宇宙開発事業団(NASDA)+宇宙科学研究所(ISAS)+航空宇宙技術研究所(NAL)
のいわゆる「宇宙三機関統合」に端を発するものと考えていいのではないかと思います。
「宇宙3機関の統合について(文部科学省)」(PDF) - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu16/siryo5.pdf
「資料12 宇宙3機関の統合について」 - 文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu0/shiryo/attach/1331286.htm
※この「宇宙三機関統合」は「中央省庁再編」からの流れというのも
覚えておきたいところです。
また、JAXA'sというJAXAの広報機関誌に当時のJAXA理事・樋口氏に「長期ビジョン」についてのインタビューが掲載されており、外向きの「なぜ長期ビジョンを設定したのか」という話が書かれています。
「JAXA's 002」 - JAXA
https://fanfun.jaxa.jp/c/media/file/media_jaxas_jaxas002.pdf
これを読むと、
Q:20年なのはなぜ?
A:10年だと今の延長、理想をおいてそれに近づけるという手法を取りたかった。
と書かれており、実現するかどうかはともかく、
当時のJAXAとしての理想を描いたものである、ということもおさえておきたいです。
<「長期ビジョン全体ロードマップ」をスタート地点にする>
PDF「JAXA長期ビジョン概要」のPage.19に
「長期ビジョン全体ロードマップ」という絵が掲載されています。
1ページ目にこれを載せておけば話が早いのですが、ブックレットだと
印刷の都合なのか、カラー折りたたみページとして後ろのほう(Page.81)にあります。
(すごくダルいですね)
このロードマップでは対象領域を
1.宇宙利用による課題解決型の社会システム
2.宇宙観測/太陽系探査
3.月探査・利用
4.友人宇宙活動
5.宇宙輸送システム
6.航空
の6つに分け、それぞれ、
・2015年までにやっていくこと
・2025年までにやっていくこと
・2025年の状態
という具合に書かれています。
次回以降でそれぞれの対象領域について細かく見ていきたいと思います。
<とりあえず「長期ビジョン全体ロードマップ」を見た感想>
「あれ、2015年まではすごくがんばってない?」というのが
ロードマップをざっと見たところの感想です。
これは
・10年であれば開発スパンが長かった宇宙分野の予測は立てられる
・ベースとなる政治/経済に大きな変化が起こる確率が低い
・ビジョン策定はきちんとボトムアップでやっていて
短期的な話は堅実に積み上げられていた
というあたりが原因ではないかと思います。
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