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欠落

スーパーのレジで払いをすませ、ビニール袋に買ったものをしまっていると、
小銭がちらばる音がした。見ると、レジのところで初老の女性ががま口から小銭をぶちまけてしまっていた。
そこで拾うのを手伝おうかという思いが、一瞬、頭にうかんだけれど、身体は動かず。
結局、店員が手伝っていた。
俺はさっさとビニール袋を持ち上げて、スーパーを出た。

帰り道に思ったのが、いつから、俺、こんなやつになったんだろう、ということ。
昔は結構、人目はばからずに人を手伝ったりしていた。
職分とかぜんぜん考えず、ただ、困ってる人がいたら、何も考えずに身体が動いた。

働きはじめてから、少しずつ、少しずつ、身体が動かなくなってきている。
自分がしなくても誰かがするだろう、という考えが、真っ白いテーブルクロスにしょうゆ瓶を倒したときのように、
黒い染みを少しずつ広げている。

いとしい人が自分の前で泣いたときに身体が動かなかったのも、一事が万事、ということなのかもしれない。