切屑堂 kirikuzudo

ブログ: 2019/08/15 フェアリング空調の検討(その5)

フェアリング空調がどういうものか理解するため、串本町のスペースワン社のロケットを題材にフェアリング空調の検討をしてみました。 フェアリング空調系統に必要な能力推定と具体的な機器選定を続けます。 <センサ/伝送器類の機器選定>  要求として送風量が出ているので空気の流量を測定し制御する必要があります。気体用の流量計にはいくつか種類がありますが、今回のような流量・圧力・温度の条件下で使いやすいのは熱式質量流量計(マスフローメーター)か渦式流量計か超音波流量計でしょう。価格的に安価なのはマスフローメーターか渦式流量計です。筆者は渦式流量計に慣れていますので、今回はこちらを採用します。マスフローメーターならアズビルのCML型にします。渦式流量計はオーバルのEXデルタ型にします。  渦式流量計は流路に直交した断面がデルタ型の渦発生体により発生するカルマン渦の周波数が、流速とストローハル数に比例することを応用した流速の計測器です。これに測定管の断面積を積算することで流体の体積流量が得られます。カルマン渦の検出上下限が測定流量上下限となるため、あまり対応可能な流量計測範囲は大きくありませんが、今回のようにほぼ定流量であれば問題ありません。  さて、気体は圧縮性があるため、体積流量を得ただけでは質量流量はわかりません。今回は質量流量の要求まではありませんが、どのみち流量計出口で圧力と温度は測りますので、それを用いて質量流量の演算も行うようにします。  圧力の計測は圧力伝送器を使用します。測定の確度が高いほうがよいですが、クリティカルな事項ではないので、定番で入手性のよい長野計器KH15を採用します。温度はシース測温抵抗体を使用して測定します。安定の岡崎製作所R96Nを採用します。もんじゅの事故を思い出しながら、シース長は100mm以下におさえます。保護管付きでもいいかもしれません。  湿度の要求もあり、湿度の制御もしなければいけません。湿度の測定は絶対湿度と相対湿度の出力ができる、テクネ計測EE33を採用します。絶対湿度と温度から相対湿度を計算して、必要な除湿/加湿量を求めます。最終的にはアンビリカルマスト頂部のEE33で測定した相対湿度が要求値に入っているかどうかになります。  清浄度の要求もあります。これはサンプリング式のパーティクルカウンタを使用して、インラインで計測します。パーティクルカウンタは本来であればアンビリカルマスト頂部に設置するべきですが、入口側で清浄度が確保できていれば問題ないと判断して、フィルタ後段に設置します。製品は少し高価になりますが、ベックマン・コールター社のMET ONE 6003を採用します。 <バルブ類の機器選定>  除湿用の熱交換器と加熱用ヒーターはバイパス流路を設けて除湿量/加熱量を微調整できるようにしますので、調節弁が必要になります。定石ならばグローブ弁タイプの調節弁(筆者はアズビルのACT型が大好き)を使いますが、システム圧力が低く流量もそれほど大きくないので、バタフライ弁タイプの調節弁を採用します。安さに定評のある日本バルブコントロールズのTAC063DN901TTF-080-EU型とします。こちらは4-20mAの信号で開度を指示し、また、現状の開度を4-20mAでリターンしてくるスマートポジショナ搭載品とします。  その他に吸込の開閉が必要になりますので、そちらにはKITZの空動バタフライ弁を使用します。あとは手動のバタフライ弁とボール弁になりますが、このあたりもKITZで統一します。  調節弁も空動弁も操作用のエアが必要になりますので、小型のコンプレッサーとバッファタンクを準備します。バルブ類の操作頻度はそれほど多くなく、1馬力程度のコンプレッサーで補充は十分間に合います。安価な日立産機システムのベビコンを採用します。バッファタンクは少し大きめの300Lとします。第二種圧力容器検定を受けたものにします。ドレンによる腐食抑制のため、内部エポキシ塗装品を採用しましょう。ドレンの定期排出のための電磁弁と安全弁の設置も忘れてはいけませんね。また、操作エアの圧力監視を行う必要がありますので、こちらも長野計器のKH15を設置します。 <送風機>  送風機はインバータで運転周波数を変えて、送風量をコントロールします。送風機の羽根車はイナーシャがけっこう大きいので、容量が1まわり大きいインバータを選定したほうが無難でしょう。周波数変化率と電流を制限するパラメータはきちんと設定しておきましょう。インバータは通信操作としますので、三菱電機FR-A820-5.5K-GF-1を採用します。 <チラー>  RKS1500Fは接点をON/OFFしてやるだけで、特になにかあるわけではありません。設定は本体パネルで行いますが、こちらは5℃固定にしておけばOKでしょう。循環液は工業用水にナイブラインZ-1(エチレングリコール系添加剤)を30%添加したものを使用します。冷却能力が10%ほど低くなりますが、凍結と腐食を防止できます。 <コントローラー>  さて、コントローラのほうを見ていきましょう。こういった設備機器を制御するコントローラにはいろいろありますが、おそらくイプシロンロケットの地上設備系でも使われているであろう、三菱電機のシーケンサとタッチパネルでコントローラを採用します。(地上系のペーパーに三菱電機のタッチパネルがそのまま出てきていました。)  インバータと通信したいので、CC-Linkユニットを使用します。あとは調節弁や噴霧用ポンプと4-20mAの信号をやりとりするためのアナログ入出力ユニットが必要になります。  ------------------------------------------------- 今月はここまでになりますが、機器選定はまだまだ続きます。