切屑堂 kirikuzudo

ブログ: 2020/03/15 芋の煮っころがし装置の検討(その1)

汁なし芋煮とはつまり芋の煮っころがしでは?、とのリプをいただいたので、河原で使う小型の「芋の煮っころがしマシーン」を設計してみようと思います。 運搬がしやすいように鍋の直径は2000[mm]とします。道路交通法といすずのエルフが設計を決めるのです。 芋の量は1200[kg]程度(冷凍さといも400gを3000袋分)として、マージンとして500[kg]を見て1700[kg]程度を設計値とします。これで参加者が増えても安心ですね。 さといもの密度は1100[kg/m3]とします。これは1070[kg/m3]の選別液で沈んだものを良品とするさといも選別方法を考慮したものです。 芋の量と密度そして鍋の直径から芋の高さを500[mm]として考えます。鍋のへり高さは800[mm]ぐらいを見ておきましょう。 次に回転動力を考えます。 外周の周速度の70[%]を煮っころがしの基準速度に合うようにします。20[cm]の雪平鍋で煮っころがしを作るときには5[sec]で鍋を一周させるぐらいがいいように思いますので、基準速度を0.1256[m/s]とします。そこから外周での周速度は0.174[m/s]と決まります。 周速度0.174[m/s]と直径2000[mm]から角速度は0.1794[rad/s]です。回転数に直すと1.731[rpm]ですね。 回転動力は減速機付きかご型誘導電動機(ギヤードモータ)を想定します。インバータ駆動で消費電力を抑えつつ回転速度が調節できるようにしましょう。 鍋の回転軸まわりの芋の慣性モーメントは芋の高さ500[mm]、芋の直径2000[mm]、芋の密度1100[kg/m3]から6911.5[kg・m2]になります。 定格の角速度1.731[rpm]までは50[sec]ほどかけて到達させるとして、必要な角加速度は0.0036[rad/s^2]になります。 定格の角速度まで到達するのに必要なトルクは鍋の回転軸まわりの芋の慣性モーメント6911.5[kg・m2]と角加速度0.0036[rad/s^2]から24.8024[N・m]となります。 次に芋を煮っころがすために必要なトルクを見てみましょう。さといも同士の回転運動や並進運動に抵抗する摩擦を考えると、芋の煮っころがし操作は高粘度流体の撹拌に近いと考えられます。ここから、撹拌を停止して2[sec]程度で、さといもの持つ角運動量はさといも同士の摩擦で失われると想定します。 これより、煮っころがし操作トルクは慣性モーメント6911.5[kg・m2]と角速度0.1794[rad/s]と停止までの減速時間2[sec]から619.96[N・m]となります。 煮っころがし操作トルクと角加速トルクをあわせると619.96+24.8024=644.76[N・m]で約650[N・m]のトルクが要求されます。 必要トルク650[N・m]で回転数1.731[rpm]に適合するギヤードモータを選定します。クズさんは三菱電機の手先なので、GM-DPシリーズから選定しましょう。要求に適合するのは0.75[kW]の減速比1/900のものになります。 主軸径はギヤードモータが60[mm]なのでこれに合わせます。軸継手は鍋屋バイテックのフランジ形軸継手FCL-250を選定します。キー溝付き軸穴加工サービスが便利ですよね。 食品に接触する可能性のある上部はSUS304製となるので、念のため、せん断応力を確認しておきましょう。軸径60[mm]でトルクが650[N・m]なので発生するせん断応力は7.67[MPa]です。SUS304の0.2%耐力は205[MPa]で、せん断のみの場合はこの1/4程度まで耐えられるので、7.67<(205/4)で十分に安全ですね。 次に軸貫通部のシールを考えていきましょう。軸の周速度は、角速度0.1794[rad/s]と軸径60[mm]より、0.0108[m/s]ときわめて遅く、また、内容液が軸を貫通しても大きな問題とならないため、シールはグランドパッキンによるものとします。 グランドパッキン材質は食品衛生法等の基準適合を考慮し、バルカーNo.7232を採用します。パッキン幅はメーカーの選定表より軸径60[mm]に対応する14.5[mm]とします。パッキン段数は6段として、2段毎にPTFE製のスペーサーリングを挿入します。軸自体の温度はあがらない想定のため、スタッフィングボックスの冷却や注水はおこないません。 軸受はグランドパッキン下部にTHK製クロスローラーリングRU178Gを設置します。軸にフランジを取り付けて、それをクロスローラーリングにかませる形になります。軸とフランジの締結はシュパンリング等の摩擦式締結具を使います。 さて、ここまでの構成を図にまとめておきましょう。 ここから考えないといけないのは  ・加熱方式(底面にカートリッジヒータ取付)  ・撹拌羽根の方式(どうすればさといもをすりつぶさずうまく煮っころがせるか) になります。 このあたりは次回以降で考えていきたいと思います。